厚生労働省は2019年12月13日に、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」を先進医療から外すことを提案し、中医協総会にて了承されました。これにより、2020年4月から「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は先進医療から選定療養となっております。
ここでは先進医療とはどういうものか、また「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が選定医療になることとはどういうことか、についてご説明していきます。
先進医療とは
まずは「先進医療」とはどういうものでしょうか。
先進医療とは、「厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた療養」であると定められています。また、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、保険診療との併用を認めるものです。
2020年2月1日時点で87種類あります。
そして、先進医療は厚生労働大臣が定める「評価療養」とされています。
評価療養と選定療養
先進医療の詳細な説明の前に「評価療養」と、冒頭でも出てきました「選定療養」という言葉についてご説明します。
評価療養とは
評価療養とは、将来、公的保険給付の対象とするべきかどうかを評価を行う療養のことです。今はまだ公的保険給付の対象ではありませんが、保険給付の対象とすべきものであるか否かを医療の効率的な提供などについて評価を行っている段階です。
以下のものがあります。
・先進医療
・医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験にかかる診療
・保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用
など。
選定医療とは
厚生労働省が定める、患者の快適性や利便性に関する療養、医療機関や医療行為等の選択に関する療養をいいます。疾病に対する治療としては認められないが、患者の療養の質を向上させる選択肢となるものです。
以下のものがあります。
・特別な療養環境(差額ベッド)
・歯科の金合金等
・予約診療
・時間外診療
・回数を超える医療行為
など。
また、評価療養も選定療養も、健康保険等からは支給されず患者自身の自己負担となります。
先進医療にかかる費用は自己負担
先進医療にかかる費用は医療の種類や病院によって異なりますが、患者の100%自己負担となります。ただし、診察や検査・投薬・入院料など、先進医療と通常の治療に共通する部分は一般の保険診療と同様の扱いになります。
あくまで先進医療の療養だけの費用が自己負担となるのであって、先進医療と並行して行われる一般的な治療は各種の健康保険と同様に基本的には3割負担となるのです。
先進医療の技術料
具体的に先進医療はどのようなものがあって、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。
以下は中央社会保険医療協議会「平成30年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」を元に技術料を算出したものです。
先進医療 | 技術料 | 年間実地件数 |
---|---|---|
重粒子線治療 | 約313万円 | 1,008件 |
陽子線治療 | 約271万円 | 1,663件 |
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 | 約65万円 | 23,859件 |
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 | 約30万円 | 178件 |
MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法 | 約10万円 | 366件 |
重粒子線治療や陽子線治療はがんの療養としてのものですが、自己負担としては高額になるものも多くあります。
そして、年間2万件以上の実地が行われている「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が2020年4月から先進医療から外れることとなります。
民間保険における先進医療特約
これだけの高額な費用が必要な先進医療ですので、一般的な治療としてはハードルが高い方も多いと思います。そこで保険会社の医療保険には「先進医療特約」というものがあります。
先進医療特約とは
「先進医療特約」とは、先進医療による療養を受けたとき、先進医療にかかる技術料と同額の給付金が受け取れる、というものです。
しかも毎月の保険料はプラス数十円~数百円というものがほとんどで、オプションとしてはかなり有能なものです。
保険会社はどのプランにも先進医療特約は付加できるものが多いので、わずかな保険料で高額な先進医療を受けることができると思えば付加しておいて損はありません。
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術が先進医療から外れるということ
冒頭でもお伝えした通り、2020年4月から「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が先進医療から外れています。
どういうことかというと、保険会社の保険での先進医療特約が適応できなくなる、ということです。
民間の保険で「先進医療特約」があれば、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」を行った後に同額の給付を受けることが出来たのですが、これからはそれがなく全額自己負担となってしまいます。
「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、先進医療の中でもダントツで実施件数が多い療養ですので、その影響は大きいものだと予想できます。
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術とは
「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」とは、白内障の手術時に行われるものです。
白内障とは、目の中でカメラのレンズのような働きをしている水晶体が、加齢とともに白く濁って視力が低下する病気です。高齢になればなるほど発症率は高く、80代ではほとんどの人が発症しているとも言われます。
もちろん白内障の治療はこれ以外にもありますが、先進医療から外れるとなると影響は大きくなってきます。
ただ、現在は先進医療特約により価格が比較的高く設定されていますが、先進医療から外れると各医療機関が競合して価格を下げる可能性も高くなってくるでしょう。
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